アヒルと鴨のコインロッカー

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)

前から読みたいと思いつつ、文庫化されたのこの機会に読みました。大学生の僕は引っ越してきて早々、隣人に「一緒に本屋を襲わないか」と奇妙な提案をされる。彼の標的は、たった一冊の広辞苑!?
この物語は、なんだかよくわからないまま変な隣人に連れられて僕が本屋を襲う片棒を担がされる現在と、2年前に発生したペット殺し事件の2つの話が同時進行する並列型のストーリー展開。突拍子もない始まりで、ぐっと読者を引き付け、さらにどんな関係があるのかよくわからないまま2年前のペット殺しの事件が淡々と語られていく。共通するのは変人河崎。交互に語られる物語。この形式で進むからには当然のことながら、この2つの物語は少しずつ近づきながら、最後には大きな1つの物語へと集約されていくわけですが。ただし、予想外の方向に。実に巧い。
帯に2007年映画化とか書いてあるんだが、これ映画化してもおもしろさが伝わらないと思うんですが。大丈夫でしょうか。
以下、ネタばれ注意。

交互に語られる2つの物語。少しずつ共通の登場人物や似たような表現が散りばめられ、読者はこの物語がどうつながるのか、あれこれ考える。直接的な表現はないものの暗黙的なつながりが示される。あまりに簡単すぎて、中盤がっかりする。なんだつまんねー。このまま変人河崎のキャラもので終わってしまうのか?が、しかし、物語は大半の読者が予想しただろう展開とは別の方向に転がり始める。そして、あらゆるパズルのピースが収まるべきところにはまっていく。そうきたか。うわぁまんまとやられたーという読後感。なんとゆーか実に巧いね。
叙述トリックは文字だから意味があるのであって、映像化したら意味なくね?それが心配。