失はれる物語

失はれる物語 (角川文庫)

失はれる物語 (角川文庫)

きみにしか聞こえない―CALLING YOU (角川スニーカー文庫)から「Calling You」、「傷」、さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫)から表題作の「失はれる物語」、「手を握る泥棒の物語」、失踪HOLIDAY (角川スニーカー文庫)から「しあわせは子猫のかたち」など乙一の代表作を集めた珠玉の短編集。前から読もうと思いながら読んでなかった乙一。なんかまとめてあるこれが入門的によいかなぁというわけで読みました。乙一作品は、残酷さや凄惨さを基調とした「黒乙一」と、切なさや繊細さを基調とした「白乙一」の2種類があるらしいですが、これはいわゆる白の方です。
頭の中にある想像上の携帯電話で電話したり、他人の傷を自分の体に移動させたりと突拍子もない設定が受け入れられるかどうかは人次第だろうけど、なかなかおもしろい作り話だなーと楽しめた。で、きちんと落としどころをきっちり作って切なさ職人ってかんじ。それぞれの短編は話をもっと膨らませれば長編にしてもおもしろいんじゃないかなーってかんじなのだけど、設定命で文章はちょっと淡々とし過ぎてて巧いとは言い難いから丁度なのかも。個人的には「手を握る泥棒の物語」、「しあわせは子猫のかたち」、「ウソカノ」みたいなシンプルでちょっと楽しいかんじのお話の方が好きかもなー。