四畳半神話大系

四畳半神話大系

四畳半神話大系

相変わらず京都を舞台に、さえない京大生がなんか阿呆なことをやってる。それを一癖ある妙ちくりんな文章でおもしろおかしく綴るという登美彦節。

大学三回生の春までの二年間を思い返してみて、実益のあることなど何一つしてこなかったと反省する主人公。あのとき、別のサークルを選んでいればこんな不毛な二年間を過ごすことはなかっただろうと後悔するのだけれども、じゃあ実際他のサークル選んでたら薔薇色のキャンパスライフを手に入れられていたのかというと...どやらそうでもないらしい。あのとき、別のサークルを選んでいればという仮定の複数のパラレルワールドで繰り広げられる物語が緩やかに結びつき、随所に散りばめられたコピペ文章、微妙にアレンジされて繰り返されるエピソードが韻を踏んでるようなかんじで読みながらニヤニヤしてしまう。そして最終章を加えることで物語全体が途端に深みを帯びてくる。うーん、実に巧妙な手口だ。

本書の帯によると、「無意味極まる超絶技巧を駆使した、登美彦氏史上もっとも厄介な小説」(著者)と自画自賛しているが、まさに才能の無駄遣いとしか言いようのない芸術的な一品である。