サマー/タイム/トラベラー

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

あの奇妙な夏、未来に見放されたぼくらの町・辺里で、幼馴染みの悠有は初めて時空を跳んだ、たった3秒だけ未来へ。SFなのに時間改変も並行宇宙もない、ありきたりの青春小説。
時かけを見てたら読みたくなったので再読です。1年以上前に読んだ時は、SF×青春テイストが素敵で、それだけに放火事件の唐突なオチに納得できずもったいなくて残念だなーという印象だったのだけど、時かけ部分だけじゃなくて、放火事件に着目してよくよく読むとちゃんとそれっぽい伏線が仕込まれていたことに気付き、単に自分の読解力がなかっただけということが判明。でもまだよくわからない不明点が残る。というわけで仮説を立ててみた。以下、ネタバレ注意。

何が気になるかというと放火の動機のようなものが欠けているような気がするし、そこは涼の記憶障害の多重人格ということで多めに見ても饗子が脅迫文の3つ目だけに過剰に反応したことに対する説明はどうなったのか。顔を見たとゆっても結局脅迫のみで実害を加える気がないのだから1枚目、2枚目と大差ないはずだ。そもそもその過剰反応が途中までは饗子が犯人という主人公の思いこみの論拠であるのにオチでは完全に忘れ去られている。実は動機がある饗子が真犯人で、涼の記憶障害を利用して自分がやったと思い込ませたという仮説はどうだろう。饗子は公文書偽造するためのサインが得意というエピソードがあったので涼の筆跡をまねることも可能じゃないだろうか。で、3枚目だけが涼本人によるものだと考えてみれば饗子は当然驚くだろう。自分が書いた覚えがないのだから。しかし正常な方の涼からしてみれば、タクトにばれたと自分に嘘をつくもっと前の時点で同じような意図の小細工がなされる可能性は十分にあるのではないだろうか。状況的に見て2枚目の時点で聡明な涼が部屋に残されたメモから事実に気付き小細工をするのは十分考えられるわけで3枚目だけは涼本人が書いた。実行犯が饗子なのかだまされた涼なのかはこの際どっちでもよいということで。動機はタクトの想像通り外の世界に逃げ出すための悠有の能力の早期開発。という解釈はどうでしょうか。

あともうひとつ、放火事件とは関係なく、時かけアニメを見てすぐだったもんだから謎に包まれたコージン未来人仮説というのも考えてみた。一人だけ年齢が違ったり、部室や水路に先回りして登場したり、誘拐事件で追っかけられてるときに都合よくバイクでタクトを拾い上げたり、最後の涼が立てこもってる場所が学校だと知っていたり、と気にしだすとなかなか興味深い点がいろいろ出てきたり。1日24時間の速度で未来にたどり着くとかなんらかの事情で帰れなくなった未来人が言いそうだなぁ。もちろんタイムパラドックスはどうしたとか矛盾点もいっぱいあるわけだが。思考実験としてはおもしろいんじゃないかという勝手な無駄話。