城陽人 of The Year 2007

この賞は2007に発売されたとかに関係なく、今年読んだ本の中から個人的におもしろかった本に贈られる賞です。選考方法はただの主観なのであらかじめご了承下さい。ちなみに2006はこちら→城陽人 of The Year 2006 - 城陽人の本棚

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

夜は短し歩けよ乙女で有名な、森見登美彦のデビュー作。女性とは絶望的に縁がない主人公に初めてできた恋人水尾さん。しかし、夢の日々は長くは続かず水尾さんはあろうことか私を振ってしまう。「なぜ彼女は私という人間を拒否したのか?」という疑問を解明するため私は水尾さん研究と称し、彼女を観察し続ける。彼女の行く先々に先回りし、後を付け...ちょっwどうみてもストーカーです。本当にあり(ryとツッコミたいところを、これはストーカーなどという低俗なものと同列にされては困る、あくまで研究であると言い張る主人公。もう、なんだか痛々しすぎます。
仰々しい古風な文体で、冴えない負け組主人公が京都を舞台にばかばかしいことを全力でやるというのは森見登美彦作品に共通するのだけれども、中でもなぜこの太陽の塔をチョイスしたかというと、バカばっかりやって過剰な修飾語で本心をひた隠している主人公が、物語の最後で「ええじゃないか、ええじゃないか」と踊り狂ってる人々の中で「ええわけあるかー」と弱みをかいま見せるツンデレっぷりがなんとも言えないよい味を醸し出しているのでした。

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))

何を今更とか言われそうですが、SFの超古典的名作。親友に発明をだまし取られ、恋人にも捨てられて人生に絶望した主人公が冷凍睡眠で30年後の世界にゆくお話。洒落た言い回しやら、緻密な伏線の構成やらが絶妙でほんとおもしろいので読んだことない人は読んだ方がよい。

図書館戦争

図書館戦争

図書館内乱

図書館内乱

図書館危機

図書館危機

図書館革命

図書館革命

公序良俗を乱す表現を規制するために成立したメディア良化法。次第に検閲はどんどんエスカレートして火器による武力行使も止む無しとされ、これに対抗するために図書館も自衛組織を結成しドンパチやるという図書館戦争シリーズ。こないだやっと完結しました。全4巻。
本を守るために武力行使でとかいうと本当に無茶苦茶な設定のように聞こえてしまうのだけど、メディア良化法成立の過程やら、その後現在まで続く政治的な駆け引きやらもちゃんと練ってあってドンパチだけやってるわけでもなく、駆け引き部分もなかなかに読ませる良作。キャラも元気いっぱいラブコメもありでバランスのよいエンターテイメントってかんじです。

その他、脳内ノミネートされたが惜しくも敗れた作品たち

今年の特徴として、ビジネス書をかじるようになったということもあるので、特別にビジネス書からも1つ。

ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)

ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務 (光文社新書)

ファイナンスというのはよーするに財務のことなんだけれども、例えば現在100万円の価値と1年後の100万円は価値が違って、インフレとかそーゆー意味ではなくて、投資したり預金したりしてなんらかのリターンが得られるという意味において今すぐ100万円ある方が価値が高いんだから、資金の回収はなるだけ早く、返済はできるかぎり引き伸ばせと。時間軸の異なるキャッシュを比較する場合にはその分を調整せねばならんとか、ビジネスやってる人には当たり前のことなんやも知らんけど、まったく畑違いすぎて新鮮な視点が得られて勉強になったのでした。