まぐれ

たまたま本屋で見かけてタイトルがおもしろそうだったので読んでみたのだけど、当たりだったのでオススメしておく。
うまくいくと自分の実力、失敗したら運が悪かっただけと思ってしまう人間の性質というか、非対称な感情の構造について深く考えさせてくれる本。サブタイトルは投資の本っぽいけど、ランダム性を受け入れる考え方は効率化、最適化を突き進む仕事やら、日々大量にあふれまくってる情報の海に溺れそうになる今日この頃にパラダイムシフトを与えてくれるので読む価値はあるんじゃないかと。途中で哲学やら社会科学やら専門的な話に脱線するところはよくわかんないけど、まぁ雰囲気だけ楽しんどけばよい。語り口が楽しいので。

内容をおおざっぱに言うなれば、例えばファンドマネージャを1万人ぐらい集めてきたら、5年連続ですばらしいリターンを出す人も出てくるやろう。問題はそれが運なのか実力なのかを区別する方法がないので、成功した人100人に成功の秘訣を聞いて、リスクを果敢に取る人だとか、右脳がどうだとかみたいな共通点を上げてみても、たまたま同じことをしていたのか、それがあったからこそなのか因果関係を証明できないわけで。当然のことながら果敢にリスクをとって失敗した人は退場してしまっているので大衆に見えない。表舞台に見えるのは成功した人ばっかりだし、自分のこととなれば、サンプル数1の自分しかいないわけで、もしかしたら失敗していたかもしれないパラレルワールドを想像できない。でも人間は誰しも自分だけは特別だと思ってしまうようにできているので、偶然性はどうしても過小評価されてしまう。あれこれこうやったからうまくいったんだともっともらしい理由を後付けする。もっと偶然の果たす役割を認めてもよいんじゃね?というかんじ。

偶然性を割り引いて考えるようにすると、自慢話は話半分に聞くし、少々悪いことが起こっても、ノイズだと思えるし、気分的に自由に生きられるような気がする。