一瞬の風になれ

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ-

一瞬の風になれ 第二部 -ヨウイ-

一瞬の風になれ 第三部 -ドン-

高校の陸上部を舞台にした青春スポ根小説。青春ものには弱い城陽人ですが、ものすごーくよかったです。森絵都のDIVE!とかあさのあつこのバッテリーとかそーゆーかんじ。全3冊まとめ読みするとなかなか読み応えもあり、登場人物たちのスプリントにかける情熱、試合の緊張感、100mをおもっきり駆け抜ける疾走感、ライバルへの闘争心、400mリレーのチームの結束、そういったいろいろな感情が洪水のようにどばーっと溢れ出して来て夢中になって読み進め、最後に残るのは充実感。うーん、こーゆー爽やかな本大好きだなぁ。

以下ネタバレを含むため省略記法
この本のラストは400mリレーの南関東決勝が終わったところで終わり、インターハイの最後までは描かれていない。しかも関東の200mは放置されたままだ。考えたのだけれども、もし、この続きとして200mの決勝、そしてインターハイでの新二と連の活躍が描かれたとしたら、新しいキャラクターを登場させないことには行けないし、二人もさらに速くならなければいけない。もちろんそれはページ数があれば可能だろうけれども、そーすると物語全体のスピード感では、少しできすぎてて冗長かもしれないなぁと思うのでした。
最終的にインターハイ勝てないにしても敗北というピリオドで成長の物語を締めくくるという最後も考えられるけれども、それをせず、あえて進行形のままで、疾走感を残したままで終わる。この物語は、インターハイなんかで終わるのではなく、これから先、大学でも、そして大人になっても二人がバカみたいに競争しあいながら走り続けるんだろうなぁという印象を残した引き際にするのが、結果として最良だったのではないかと、冷静に検討してみて思いました。そしてその終わり方をなんとなく読者に納得させる読後の充実感で満ち溢れているからこそできるのだとも思いました。