変身

変身 (新潮文庫)

変身 (新潮文庫)

朝起きたら醜い虫になっていたという突拍子もない設定を、主人公は当たり前のように受け入れ、淡々と自分の現状を分析し考え行動する。しかし、醜い姿になった主人公を家族は忌み嫌い閉じ込めようとする。
この虫というのは、作中では本当の虫として描写されているのだけど、もちろん虫そのものは比喩に過ぎない。みんなから忌み嫌われるような存在。足を引っ張り疎まれるような存在。具体的に何とここで名言するのは避けるけど、もしかしたらある日突然、自分もそうなって差別的に見下される側に転げ落ちるかもしれない、どうすることもできないような外力によって。虫になっても人の心を持ち続ける本人の認識と周りとのずれや、虫に慣れすぎて人の心が少しずつ虫の思考に変化していくあたりがいろんな示唆に富んでいて興味深い。