風の影

風の影 (上) (集英社文庫)

風の影 (上) (集英社文庫)

風の影 (下) (集英社文庫)

風の影 (下) (集英社文庫)

1945年のバルセロナ。主人公のダニエルは古本屋を営む父に連れられて訪れた忘れられた本の墓場1冊の本「風の影」と出会う。ダニエルはその著者フリアン・カラックスについて父に尋ねるが、古本屋の父でも聞いたことがないという。謎の作家フリアン・カラックスの生涯を追ううちに少しずつ明らかになってゆく過去の悲劇。そのストーリーは現在のダニエルが置かれている状況と奇妙な繋がりを見せ始め...。
ジャンルはミステリーなんだけど、なんたら殺人事件とかの探偵物とかではない。物語の前半は、ダニエルの少年時代のエピソードで、年上のお姉さんに恋して振られるというどこにでもありそうなお話でちょっと退屈する(まぁこれは後々効いてくる必要な構成要素なんだけど)。んで、物語が進むにつれてフリアン・カラックスの生涯の断片がいろいろな人物から間接的に語られる。しかしカラックス本人の視点から過去が独白されるのではなく、あくまでも間接的に語られるというスタイルをとるのがポイント。間接的な話を組み合わせていくことでカラックスが辿った悲劇のストーリーが立体的に浮かび上がり、それが現実のダニエルに降りかかってくる状況とリンクし始め、少しずつ明らかになる過去の事実と、現在の物語の繋がりが意味するもの、つまり最悪の結末を示唆することで加速する。んー。下巻からの加速はなかなか読ませる構成。