夏季限定トロピカルパフェ事件

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)

小市民シリーズその2。小市民たるもの、日々を平穏に過ごす生活態度を獲得せんと希求し、それを妨げる事々に対しては断固として回避の立場を取るべし。諦念と儀礼的無関心を心の中に育んで、そしていつか掴むんだ、あの小市民の星を！小市民を目指す小鳩君と小佐内さんのこの夏の運命を左右するのは＜小佐内スイーツセレクション・夏＞！？
裏切られた、よい意味で。前作は消えたポシェットの謎とか、どうやってココアを入れたかとか日常系の小粒な謎ばっかりだったので、ミステリというにはいささか語弊があり、どちらかといえばキャラ重視でおもしろかったんだけど、今回は違う。もちろん二人のキャラは絶品だ。が、それに惑わされ1巻と同じつもりで読み進めていると、まんまとやられたーってかんじだ。やばい、米澤穂信はただものじゃない。何がただものじゃないのかを説明しようとすると、ネタバレになるので、省略記法で。これから読もうと思ってる人は決して見ないようご注意を。うー。作品をオススメするのにオススメ理由がネタバレで書けないというのはつらい。。。とりあえず読めとしか言いようが＿|￣|○

はじめの「シャルロットはぼくだけのもの」は内緒で小佐内さんのケーキを食べようとする小鳩君の葛藤がそれ単体でもすごくおもしろいんだけど。これが、第1章にあることで、読者に1巻と同じ雰囲気で読ませる罠がある。

続く、薬物乱用がらみのお話で友人の健吾がここに連絡してくれと「半」と書いたメモとか、活字ではなくわざわざ挿絵で「半」と書いたメモを載せたりすると、もはやバレバレだよとか思いつつ、続く誘拐事件もやけにあっけなく終わってしまい、うーん、やっぱりミステリ部分はイマイチだなーとか読みながら思ってたわけです。が、それらすべて、というかそもそも＜小佐内スイーツセレクション・夏＞そのものが伏線になっていようとは。
．．．そして、衝撃の結末。えええええええっーーー？？！！！
ほんとやられたーってかんじ。早過ぎる二人の別れ。この結末へと辿り着くように1巻から少しずつじわじわと小市民から離れていく様を描いていたのだとすれば、ただものではない。

春季限定、夏季限定ときて、ちゃんと秋、冬と続きますよね？解説に続くっぽいことが書いてあるけど、想定外の結末（というか夏でいきなり完結しちゃったぽい？）にちゃんと続編が出るのかすんごい不安。ちゃんと出ますよねーヽ(;´･ω･)ﾉ?