愚者のエンドロール

愚者のエンドロール (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

「やらなくてもよいことならやらない。やらなければいけないことなら手っ取り早く。」がモットーの省エネ奉太郎がなんだかんだ言いながら厄介ごとに巻き込まれる古典部シリーズ第2弾。文化祭用の自主制作ミステリ映画が脚本家病気のため頓挫。未完結の脚本のオチは?
駄作ですね。未完結のミステリ映画の犯人とトリックを推理しようという趣旨自体は単純な推理ものよりも視点がおもしろくていいと思うんだけど、それ以前に根本的な欠陥が。以下ネタバレを含むため省略記法。
この映画を書いた脚本家が素人であるという前提条件の下で、脚本家がどこまでのことを考慮し、また考慮していないのかが不明では、どの可能性も否定も肯定もできない。作中ではあれこれ理由をつけて却下するが、脚本家の不注意という可能性もないわけではない。何がありで何がなしなのかまったくわからない。結局、すべての可能性が推論の域を出ず読者に考える余地なし。そしてオチが脚本家の意図どおりに撮影が行われておらず、本当は死ぬ予定ではなかったではひどすぎる。死んでいたという前提そのものを覆してしまえば、前半3人の意見+奉太郎案をまじめに考えて却下した読者があまりにもかわいそうだ。もちろんホームズの作品の○×でヒントが提示されていたという人もいるだろう。しかし、意図した通りに撮影されていなかったというのであれば、映像中のヒントすべてが信頼できない無効なものとなってしまい、推理とか以前の問題。そして最後に提示される解答らしきものも、おそらくそうではないかの範疇を出ない。それを却下することは簡単。脚本家は人が死ぬ話は嫌いだったが、気が弱い人だったので、クラスみんなの希望をむげにできず、やっぱり被害者は死ぬことに。血糊の量が少なかったのは、そんなもの使ったことがなかったのでいくら用意すればよいのかよくわからなかった。以上。