ウェブ仮想社会「セカンドライフ」

セカンドライフとは何か?ネットゲーと何が違うのか?なぜ大手企業が次々参入しているのか?Web2.0の次のモデルに乗り遅れるなというのが本書の趣旨。
セカンドライフが気になりつつも手を出せないでいる人々に向けての広告?のような印象を受けるのは、著者がセカンドライフへの企業参入の手助けをするベンチャーの代表さんだけあって、全編に渡ってセカンドライフってすげー、ほんとまぢこれからの時代はこれだよというテンションなのが残念な感じです。立場上負の側面に関する検討は書けないにしても、それが人間の生活の中にどのように入ってきて、ライフスタイルを変えていくのかというビジョンを示すべきというか。10年先のビジネスマンはみんなアバターを持つようになるというだけではあまりにも陳腐すぎるというか。

ここからは読んで考えたこと。

Web2.0の次は何か?というのは個人的にもすごく興味のある話題で、城陽人的なビジョンとしてもいわゆる「あちら側」の世界に住むというモデルには賛同。専用のビューアを使ったアプリなんだからそんなものはWebですらねぇという議論はひとまず置いておいてね。セカンドライフ上での経済活動は誰でも自由にコンテンツを創造してそれで商売して生計を立てることができるというのは一部のアーリーアダプター層の話であって、現状のWeb2.0を見ればわかるように、大衆はそれを消費するだけ。その圧倒的な多数は、それを副次的なメディアとしてしか見なさず、それがリアルにとって変わることはありえないと思う。物理的に肉体がリアルの世界に属しており、マトリクス的な電脳の世界にでもならない限りというのが思ったこと。ビジネスのツールになるのは間違いないけど。

あと、気になるのはセカンドライフそのもののビジネスモデル。これについてはサービス運営しているリンデンラボは月額いくらの維持費を徴収するだけで、あとはインフラを提供するだけと書いているんだけど、それは非常に認識が甘い。
セカンドライフ内での経済活動が活発になるほど、リンデンドルの発行数は増加する。これは元々ドルから変換された仮想通貨ということは、これが再びドルに変換されない限り、リンデンラボが一時的にプールしているということになる。銀行に預金しているようなもの。銀行というのは元々全員が同時に預金をすべて引き出さないという暗黙の仮定の上に成り立っているわけで、つまり、リンデンラボもドルに還元されない発行残高分はすべて丸儲けというわけ。それを別のところに投資して運用するというのは十分に考えられる。これでいきなり倒産でもしたらどうしてくれるんだという不安はぬぐいきれない。あと、ドルとの換算レートもリンデンラボが握ってる現状でなんとも恐ろしいプラットホームだと思う。企業もそのへんのリスクを承知した上で、それでも乗り遅れるぐらいならドブに捨てるつもりで先行投資しているんだろう。安いし。大企業が次々参入している=それだけ価値のあることだ=今すぐオマエも乗り遅れるなという論調なのだけど、なんかWeb2.0で乗り遅れたから今度は乗り遅れまいと先行投資して勝手にバブルのような状態になっているのが今の現状という冷めた視点が今の立場。
なんかこーゆーとセカンドライフそのものを否定しているような書き方だけど、そーゆーつもりではない。流れとしてセカンドライフ的なものが今後Web2.0を淘汰していくのだろうというのは賛成。ただ、今の状況がバブルのような異常な熱はちょっとおかしいというか違和感を覚える。まぁ今後普及する時期的な問題として、とりあえず遊んでみるにしても公用語が英語なので日本のコミュニティが発達するまで一般人は手を出せないだろうねぇというのが個人的な見解。その前に日本のネットゲー作ってるようなベンチャーが別のサービス作ってくれねぇかなぁ。言語の壁がmixi的な日本独自の進化を遂げる可能性は大いにある。