下流社会

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

今さらかよってかんじですが読みました。
高度成長の時代は、物質的にどんどん豊かになっていく時代で、明日はもっとよい暮らしになると希望を描き、一般庶民は中流を求めた。しかし、生まれたときから食うものに困らず、豊かな子供時代を過ごした団塊ジュニア世代は、必死になって上を目指すことなく、とりあえず生活できるだけのお金があれば、あとは好きなことをして暮らしたいと考える人が多い。このような人々を指して下流と呼んでいる。下流の人々は特に貧困というわけではなく、しかし社会人としてバリバリ働くような向上心はない。自分らしさを大切にし、夢を追い求め、しかし凡人並の才能しかなく夢破れ、結果として30歳になってもフリーターや派遣社員など低所得になることが多い。
なかなか手厳しい批評だが、もっと現実を見ろということだ。低所得者ほど自分らしさを大切にする傾向があるというのは非常に興味深いことで、もちろん、芸術家として成功する人はいるのだけど、それはほんの一握りの話で、大多数は自分は人とは違うんだと言い訳し、自分らしさという心地の良い響きに酔いしれる凡人でしかないということなのだろう。個性は大事だとみんなが考え低所得でも自由に生き、女性も社会進出と男女雇用機会均等を叫んでも、結婚相手に求める理想の男性は依然として高所得者であり、女性は家庭的な人がよいというのは生き方は多様化したわりに、幸せの形はそれほど多様化していないということなんじゃなかろうかというのが印象的だった。
結構まじめな堅い本なのでご注意を。大量の表と数値でアレルギー反応が出る人もいるかも。いろんなデータが大量に出てくる割には統計のサンプル数が少ないので細かい数字にとらわれずそのへんは軽く流しましょう。